第九百十八条  相続人は、その固有財産におけると同一の注意を以て、相続財産を管理しなければならない。但し、承認又は放棄をしたときは、この限りでない。
○2  家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によつて、何時でも、相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。
○3  家庭裁判所が管理人を選任した場合には、第二十七条 乃至第二十九条 の規定を準用する。

第九百十九条  承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、これを取り消すことができない。
○2  前項の規定は、第一編及び前編の規定によつて承認又は放棄の取消をすることを妨げない。但し、その取消権は、追認をすることができる時から六箇月間これを行わないときは、時効によつて消滅する。承認又は放棄の時から十年を経過したときも、同様である。
○3  前項の規定によつて限定承認又は放棄の取消をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
    第二節 承認

     第一款 単純承認


第九百二十条  相続人が単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。

第九百二十一条  左に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一  相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。但し、保存行為及び第六百二条 に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二  相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は放棄をしなかつたとき。
三  相続人が、限定承認又は放棄をした後でも、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを財産目録中に記載しなかつたとき。但し、その相続人が放棄をしたことによつて相続人となつた者が承認をした後は、この限りでない。
     第二款 限定承認


第九百二十二条  相続人は、相続によつて得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、承認をすることができる。

第九百二十三条  相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。

第九百二十四条  相続人が限定承認をしようとするときは、第九百十五条第一項の期間内に、財産目録を調製してこれを家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない。

第九百二十五条  相続人が限定承認をしたときは、その被相続人に対して有した権利義務は、消滅しなかつたものとみなす。

第九百二十六条  限定承認者は、その固有財産におけると同一の注意を以て、相続財産の管理を継続しなければならない。
○2  第六百四十五条 、第六百四十六条 、第六百五十条第一項 、第二項及び第九百十八条第二項、第三項の規定は、前項の場合にこれを準用する。

第九百二十七条  限定承認者は、限定承認をした後五日以内に、一切の相続債権者及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。但し、その期間は、二箇月を下ることができない。
○2  第七十九条第二項 及び第三項 の規定は、前項の場合にこれを準用する。

第九百二十八条  限定承認者は、前条第一項の期間の満了前には、相続債権者及び受遺者に対して弁済を拒むことができる。

第九百二十九条  第九百二十七条第一項の期間が満了した後は、限定承認者は、相続財産を以て、その期間内に申し出た債権者その他知れた債権者に、各ゝその債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。但し、優先権を有する債権者の権利を害することができない。

第九百三十条  限定承認者は、弁済期に至らない債権でも、前条の規定によつてこれを弁済しなければならない。
○2  条件附の債権又は存続期間の不確定な債権は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従つて、これを弁済しなければならない。

第九百三十一条  限定承認者は、前二条の規定によつて各債権者に弁済をした後でなければ、受遺者に弁済をすることができない。

第九百三十二条  前三条の規定に従つて弁済をするにつき相続財産を売却する必要があるときは、限定承認者は、これを競売に付しなければならない。但し、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い相続財産の全部又は一部の価額を弁済して、その競売を止めることができる。

第九百三十三条  相続債権者及び受遺者は、自己の費用で、相続財産の競売又は鑑定に参加することができる。この場合には、第二百六十条第二項 の規定を準用する。

第九百三十四条  限定承認者が、第九百二十七条に定める公告若しくは催告をすることを怠り、又は同条第一項の期間内にある債権者若しくは受遺者に弁済をしたことによつて他の債権者若しくは受遺者に弁済をすることができなくなつたときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。第九百二十九条乃至第九百三十一条の規定に違反して弁済をしたときも、同様である。
○2  前項の規定は、情を知つて不当に弁済を受けた債権者又は受遺者に対する他の債権者又は受遺者の求償を妨げない。
○3  第七百二十四条 の規定は、前二項の場合にも、これを適用する。

第九百三十五条  第九百二十七条第一項の期間内に申し出なかつた債権者及び受遺者で限定承認者に知れなかつたものは、残余財産についてのみその権利を行うことができる。但し、相続財産について特別担保を有する者は、この限りでない。

第九百三十六条  相続人が数人ある場合には、家庭裁判所は、相続人の中から、相続財産の管理人を選任しなければならない。
○2  管理人は、相続人のために、これに代わつて、相続財産の管理及び債務の弁済に必要な一切の行為をする。
○3  第九百二十六条乃至前条の規定は、管理人にこれを準用する。但し、第九百二十七条第一項に定める公告をする期間は、管理人の選任があつた後十日以内とする。

第九百三十七条  限定承認をした共同相続人の一人又は数人について第九百二十一条第一号又は第三号に掲げる事由があるときは、相続債権者は、相続財産を以て弁済を受けることができなかつた債権額について、その者に対し、その相続分に応じて権利を行うことができる。
    第三節 放棄


第九百三十八条  相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

第九百三十九条  相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初から相続人とならなかつたものとみなす。

第九百四十条  相続の放棄をした者は、その放棄によつて相続人となつた者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけると同一の注意を以て、その財産の管理を継続しなければならない。
○2  第六百四十五条 、第六百四十六条 、第六百五十条第一項 、第二項及び第九百十八条第二項、第三項の規定は、前項の場合にこれを準用する。
   第五章 財産の分離


第九百四十一条  相続債権者又は受遺者は、相続開始の時から三箇月以内に、相続人の財産の中から相続財産を分離することを家庭裁判所に請求することができる。相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、その期間の満了後でも、同様である。
○2  家庭裁判所が前項の請求によつて財産の分離を命じたときは、その請求をした者は、五日以内に、他の相続債権者及び受遺者に対し、財産分離の命令があつたこと及び一定の期間内に配当加入の申出をすべき旨を公告しなければならない。但し、その期間は、二箇月を下ることができない。
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